建設業は、工事請負契約を主とし、その工事期間が1事業年度を超えて長期間に及ぶこともあることから、それをふまえた会計処理の方式が建設業法令によって定められています。建設業の許可申請、事業年度終了後の届出、経営事項審査に当って添付する財務諸表は、この方式に従って作成されたものでなければなりません。建設業会計は、原価計算、収益認定のタイミングなどに独自の考え方が採り入れられています。

財務諸表

建設業の許可申請等に当っては、次の計算書類の添付が求められています。

個人 貸借対照表(様式第18号)、損益計算書(様式第19号)
法人 貸借対照表(様式第15号)、損益計算書・完成工事原価報告書(様式第16号)、株主資本等変動計算書(様式第17号)、注記表(様式第17号の2)、附属明細表(様式第17号の3)

※ ただし、附属明細表は、次のいずれかに該当する株式会社(特例有限会社を除く)が提出します。

  1. 資本金の額が1億円超であるもの
  2. 最終事業年度に係る貸借対照表の負債の部に計上した額の合計額が200億円以上であるもの

原価計算

製造業における原価計算は、売上とそれに要する製造原価の対応関係を知る上で重要ですが、建設業ではこれを完成工事高と完成工事原価という形で把握します。完成工事高が売上高に、完成工事原価が製造原価に対応します。建設業会計では、建設工事の特殊性に応じた原価計算の方法を採ります。具体的には完成工事原価を次のように区分して処理します。

材料費 工事のために直接購入した素材、半製品、製品、材料貯蔵品勘定等から振り替えられた材料費(仮設材料の損耗額等を含む)。
労務費 工事に従事した直接雇用の作業員に対する賃金、給料及び手当等。工種・工程別等の工事の完成を約する契約でその大部分が労務費であるものは、労務費に含めて記載することができる。
なお、「労務費のうち、工種・工程別等の工事の完成を約する契約でその大部分が労務費であるものに基づく支払額」を労務外注費として別記します。
外注費 工種・工程別等の工事について素材、半製品、製品等を作業とともに提供し、これを完成することを約する契約に基づく支払額。ただし、労務費に含めたものを除く。
経費 完成工事について発生し、又は負担すべき材料費、労務費及び外注費以外の費用で、動力用水光熱費、機械等経費、設計費、労務管理費、租税公課、地代家賃、保険料、従業員給料手当、退職金、法定福利費、福利厚生費、事務用品費、通信交通費、交際費、補償費、雑費、出張所等経費配賦額等。
なお、「経費のうち、従業員給料手当、退職金、法定福利費及び福利厚生費」を人件費として別記します。

収益計算の方法

建設業では、請負契約が長期にわたることが多く、会計年度をまたがる例も少なくないという特徴があります。こうした場合、収益と工事原価を正しく対応させ把握するためには、それに相応しい会計処理の方法を考える必要があります。通常、建設業会計では、工事完成基準と工事進行基準があり、従来どちらを採用するかは各事業者の判断に任されていましたが、平成19年に企業会計基準委員会による「工事契約に関する会計基準」が策定され、工事進行基準を原則とするという指針が示されました。「工事契約に関する会計基準」は工事進行基準と工事完成基準を次のように定義しています。

  • 工事進行基準
    工事契約に関して、工事収益総額、工事原価総額及び決算日における工事進捗度を合理的に見積り、これに応じて当期の工事収益及び工事原価を認識する方法
  • 工事完成基準
    工事契約に関して、工事が完成し、目的物の引渡しを行った時点で、工事収益及び工事原価を認識する方法

工事進行基準は、工事の進捗度に応じた収益を把握する合理的な方法として位置づけられますが、これを適用するには、工事原価の総額を適切に見積もることなど、工事の進行途中で確実な現況の把握が求められます。また会計基準は、「工期がごく短いものは、通常、金銭的な重要性が乏しいばかりでなく、工事契約としての性格にも乏しい場合が多いと想定される。このような取引については、工事進行基準を適用して工事収益総額や工事原価総額の按分計算を行う必要はなく、工事完成基準を適用することになると考えられる」としています。したがって、必ずしも工事進行基準でなくてはならないわけではありませんが、建設業会計においては、この基準を採り入れた計算書類の手直し(貸借対照表、損益計算書の勘定科目の内容の一部改正)等が行われています。

主な勘定科目の考え方

建設業の財務諸表は、書式や勘定科目に分類等が建設業法施行規則その他に具体的に定められています。したがってそれぞれの計算書類はこれらの規定に従って作成しなければなりません。作成に当っては、上に述べたような一般製造業と異なる建設業特有の会計処理の要領がある点に留意が必要です。

主な勘定科目
完成工事高 工事進行基準により収益に計上する場合における期中出来高相当額及び工事完成基準により収益に計上する場合における最終総請負高(請負高の全部又は一部が確定しないものについては、見積計上による請負高)。ただし、税抜方式を採用する場合は取引に係る消費税額及び地方消費税額を除く。なお、共同企業体により施工した工事については、共同企業体全体の完成工事高に出資の割合を乗じた額又は分担した工事額を計上する。
完成工事未収入金 完成工事高に計上した工事に係る請負代金(税抜方式を採用する場合も取引に係る消費税額及び地方消費税額を含む。以下同じ。)の未収額。ただし、このうち破産債権、再生債権、更生債権その他これらに準ずる債権で決算期後1年以内に弁済を受けられないことが明らかなものは、投資その他の資産に記載する。
未成工事支出金 完成工事原価に計上していない工事費並びに材料の購入及び外注のための前渡金及び手付金等
材料貯蔵品 手持ちの工事用材料及び消耗工具器具等並びに事務用消耗品等のうち未成工事支出金、完成工事原価又は販売費及び一般管理費として処理されなかったもの
工事未払金 工事費の未払額(工事原価に算入されるべき材料貯蔵品購入代金等を含む。)。ただし、税抜方式を採用する場合も取引に係る消費税額及び地方消費税額を含む。
未払金 固定資産購入代金未払金、未払配当金及びその他の未払金で決算期後1年以内に支払われると認められるもの
未払費用 未払給与手当、未払利息等継続的な役務の給付を内容とする契約に基づいて決算期までに提供された役務に対する未払額
未成工事受入金 請負代金の受入高のうち完成工事高に計上していないもの